STORY 02

明和の技術が集結した
「空気弁」で安定した
水流を守る

営業本部 新潟営業所 所長 斎藤 高洋

お客様の声を反映させた開発

管を流れる水には微量の空気が含まれている。その空気は少しずつ流れから分離して管の中にたまり、やがて水流を阻害するようになる。空気弁とはそうした空気を逃すための装置で、上水道を始め多くの管に設置が定められている。明和工業では1970年代から「明和式」と名付けたオリジナル弁の開発を続け、実用新案や特許を取得してきた。

開発のポリシーは、それまでに培った技術を元に、常により良いものを求めて挑戦を続けること。現場での発見、お客様の声を反映させて、製品の性能や安全性を高め、多くの現場に届けてきた。不凍急速型空気弁「エアリス・ネオ」と農業用空気弁「スマートエアバルブ」は、明和の技術が集結した画期的な製品。それまでにできなかったことを叶えるべく、事業部が一体となって開発に取り組み、形にしたものだ。

エアリス・ネオ
スマートエアバルブ

改良を重ねた最高傑作「エアリス・ネオ」

気温が下がると空気弁内部の水が凍り、機能しなくなるという声を受け、「それなら弁自体を本管に入れ、流水エネルギーを利用して凍結を防ごう」という画期的な発想によって、昭和58年(1983)に誕生した「エアリス」。以来、2回の改良と2回の開発を経て、操作性・安全性・耐久性を高め、小口径から大口径管路まで対応できるようにバリエーションを増やし、設置条件に応じた選択ができるように製品群を揃えてきた。

「エアリス・ネオ」はその進化形だ。形状がコンパクトになり、多様化する管種への対応が可能になった。注目すべきは、回転スライド方式を採用し、メンテナンスを簡便にしたことだ。専用工具は不要で、短時間に、誰でも簡単かつ安全に点検・清掃ができるのだ。「これまでもお客様の声や現場ニーズに応え、改良を重ねてきましたが、『ネオ』はエアリス史上の最高傑作になっていると思います」と、斎藤は胸を張る。

新発想を形にした「スマートエアバルブ」

流れる水質が変わると、空気弁にも異なる機能が必要になる。農業用パイプラインでは、水に混ざったごみや砂が空気弁に詰まり、流れを阻害し、水漏れを引き起こしていた。その度にメンテナンスが必要になり困っている――という声に応え、空気弁内の上部に空気をためこむ仕組みを考案。ごみはもちろん水自体もシャットアウトして、ごみ詰まりを根本から防ぐことのできる農業用空気弁「スマートエアバルブ」を開発し、平成27年(2015)に特許を取得。独自の技術は今、新潟県を中心に売れ行きを伸ばしている。

新構造はそれだけではない。抜群の止水性を持っているので、ポンプを用いない、自然流下ラインなど低水圧のパイプラインにも対応できる。素材は耐久性に優れたステンレス鋼とプラスチック。その結果、「明和の製品に変えたら、メンテナンスの回数が減った」「長持ちする」という声が寄せられるようになった。「けれど、これで完成ではありません。幅広く情報や声を集め、改良を続けます」。斎藤たちのチャレンジは今も続いている。

安定した品質を確保する機械加工と検査体制

空気弁の機械加工は自社で行うこだわりがある。水圧と大気圧との差で作動させる空気弁を安定して作動させるために、精度を要求する機械加工は製品を支えている。また、それを組み上げ、全数検査を実施し、確かな製品としてお客様に提供。この機械加工は、グロージョイントやポンプ・バルブの加工にも活かされている。

目に触れないところで暮らしを支える空気弁

蛇口から水が出るという「あたりまえ」。平野でも山間地でも緑豊かに作物が育つ「あたりまえ」、その作物がスーパーなどの店頭に並ぶ「あたりまえ」。それらすべてに、空気弁が関わっている。人の目に触れないところに設置される小さな装置だが、水の安定供給には欠かせない。パイプラインや水道管には設置基準が定められるほど、その重要度は高いのだ。

働きは同じでも、仕組みや素材、機能は様々な種類がある空気弁。明和工業の「エアリス・ネオ」「スマートエアバルブ」は、お客様の声を反映したモノづくり、常識を覆す新発想が生み出した製品だ。「配管内のトラブルを防ぎ、常に安定した水流を保つため、新しい価値を持つものを継続的に作り出していきたいと思います」

※2021年4月に取材した内容です。